- インプラント(人工歯根)を用いた治療とは?
歯がなくなった場所にチタンでできている人工歯根を植立し、その上に冠や義歯を作製するという治療方法です。セラミックやアパタイト等を材料としたインプラントは40年ほど前から一部の歯科医の間では行われてきた治療法ですが、1980年代にチタン製のインプラントができてから広く用いられるようになりました。当院では1990年からチタン製のインプラントを使用しています。
以下の治療法は全て当院で行ったものです。
- インプラント治療の利点とは以下の4つの場合があります。
(1)隣の歯を削りたくない場合
1本あるいは2本の少数の歯を無くした場合、通常はブリッジ(隣の歯を削り、連結する修復)を装着することになりますが、少なからず健康な歯を削る必要があります。インプラントを用いれば隣の健康な歯を削ることなく欠損している部分の修復を可能にします。


(インプラントによって隣の健康な歯を削らずに治療ができます。)
図1-1

図1-2
(2)取り外し式の「入れ歯」が嫌だという場合
欠損した歯が多数にわたる場合や失った歯の場所によっては固定式の修復ができない場合もあります。インプラントを用いる事によって固定式の修復が可能になります。
左右の奥歯にインプラントを用いたブリッジの例
1990年インプラント前

2002年治療から12年後
図1-3

図1-4
(3)下顎の総義歯の安定が悪い場合
同じ総義歯でも上下では別物です。上顎は義歯に利用できる面積が大きいのに比べて、下顎は舌がありますので大きくできません。そこで2本ないし4本のインプラントを植立し、下顎総義歯の安定をはかります。インプラントによって総義歯の安定は格段に向上し、義歯がはずれやすい、噛むと痛いといったほとんどの問題が解決されるはずです。
図1-5

図1-6
(4)部分入れ歯の安定が悪い場合
部分入れ歯で自分の歯が何本か残っているとしても、その残っている場所や上下の対向関係によっては安定が悪くなる場合があります。4脚のイスと同じ様に四隅に入れ歯の土台となる歯が残っていればたいていの場合うまくいきますが、3脚、2脚になれば入れ歯は安定しません。このような場合、少数のインプラントを部分入れ歯の土台として用いると飛躍的に安定感が増します。
図1-7

図1-8
- インプラント手術はどのようなものですか?
簡単に説明すると、歯がなくなった部位に麻酔をして、顎骨にインプラントを入れるためのスペースを作り、インプラントを埋入、縫合します。植立する本数にもよりますが、1〜2本のインプラントであればおおむね一時間以内で終わります。手術後に痛みを伴うかどうかは本数や体質、痛みに対する感受性にもよりますが、「とても痛かった」という感想はあまりありません。腫脹は多少ありますが、植立本数がふえれば腫れやすくなると思います。
麻酔は抜歯等の処置の際に使用する局所麻酔のみですので、入院等の必要はありません。手術当日の入浴や運動は控えてもらいますが、あとは通常の生活でかまいません。

図1-9
- 治療期間はどのくらいかかりますか?
チタン製のインプラントが骨を結合するまでの期間は45日から3ヶ月です。その後の修復のための型取りとなりますので、手術後に歯や義歯が入るのはおおむね3ないし4ヵ月後になります。
- インプラントはどのくらいもちますか?
手術や高額な治療費を必要とするインプラントですが、けっして「一生もの」ではありません。生体に異物を入れるわけですから、日頃のお手入れや定期的な検診、メインテナンスは必要不可欠です。心臓にペースメーカーを埋めた方が定期的に病院で診察を受けられるのと同じことです。
インプラント自体は金属ですので虫歯になる事は絶対ありません。しかしながら、インプラント周囲の骨が炎症によりなくなれば天然歯の歯周病と同じ状態になります。そうなるとインプラントは動揺し機能できなくなります。当院で1990年に最初に入れたインプラントは18年後の2008年現在問題なく経過しています。反対に4、5年で撤去にいたったケースもあります。撤去に至った患者さんは「どうもないので定期健診にこなかった」「歯磨きも自己流でおろそかになっていた」というケースがほとんどです。
ちなみに当院で行ったインプラント治療の成績を開示しておきます。当院と同じ勉強会に所属する熊本市内の開業医の先生6名で「インプラントの生存率」を調査したものです。6医院で行った1268本のインプラントを追跡調査したものですが、横軸に経過年数、縦軸に生存率を表したグラフです。たとえば9〜10年
が経過したところで94%のインプラントが口腔内に残って機能しているということになります。

図1-10
これは大学病院やメーカー等のデータではなく私たち臨床家の勉強会の実際のデータです。なお、「2001年日本口腔インプラント学会学術大全」および歯科雑誌「歯界展望 2002年5月号」にて誌上発表しています。なお、この論文は歯界展望2006年7月号における岡山大学の窪木教授らの「日本人を対象とした口腔インプラント治療の臨床成績に関するSystematic Review」という論文で信頼性のおけるデータとして取り上げられています。
2008年現在当院では300本以上のインプラントを行っています。
- インプラントは保険でできますか?
残念ながらインプラントは保険治療の給付外です。インプラント植立に関わる費用やその上に作製する冠、ブリッジ、義歯、投薬もすべて保険の対象とはなりません。
どういった修復物になるかによって費用もことなりますが、料金体系は以下のようになります。
- インプラント埋入手術 ¥157,500/1本につき
- 上部構造
- 硬質レジン前装冠(スクリュー固定) \126,000
- セラミック冠(スクリュー固定) \147,000(すべて消費税含む)
最後に一番理解して頂きたいことです。インプラントを希望される患者さんにとってインプラント治療が最善かどうかが最も大切なことだと私たちは考えています。十人十色、患者さんの口腔内や健康度、価値観などさまざまです。歯科医師と患者さん双方が十分に理解を深め、納得の上でインプラント治療が行なわれることが大切なことだと思います。